【取材日記】オリーブコミューン
更新日:2023年09月08日
お知らせ
市東第一小学校を臨む高台にある「オリーブコミューン」さんを取材させていただきました。
前回の「ふれあい 千葉」に引き続き、市東地域で活動する団体さんです。
当日は遠くで雷鳴が鳴り響く平日にも拘らず沢山の会員さんが集まってくださり、木陰のベンチでの取材はとても賑やかで楽しいひと時となりました。
市原市中野にあるオリーブコミューンの活動場所は、代表の高山元春さんの私有地となります。
農家の長男として生まれますが家業は継がず、仕事の関係で市原市を離れていた高山さん。
里山とは無縁の生活をされていましたが、長年、人の手が入らずに荒れてしまった1,000㎡の敷地に生い茂った竹藪を切り拓き、オリーブの緑が繁る里山で、人と自然がつながるオープンガーデンを作ろうと会を立ち上げたのが2011年3月のこと。
活動のコンセプトは「緑がつなぐ縁」。
世界には、未だ戦争の惨禍に苦しむ人や、貧困喘ぐ人が多く存在していることに心を痛めていた高山さん。
世界の平和について思いを巡らせていたとき、平和の象徴でもある「オリーブ」が心に浮かんだそうです。
戦争がなく、経済的に豊かになった日本ですが、心の豊かさを感じることが出来ない人や経済格差による貧困に直面している人が多くいる私たちの社会も、「平和な社会」とは言い難いと感じたそうです。
都心からも近く、豊かな里山が残るこの場所に、「オリーブ」を植える活動がきっかけで沢山の人が集い、自然に触れることで、温かな交流や心の平穏を感じる日々が生まれる場所になったら・・・。そんな想いから活動を始めた高山さん。
「オリーブって、どこかお洒落な雰囲気があって、女性も来てくれそうでしょう!それに、新しい事を始めるなら誰もやっていない事を始めたい。当時、関東ではオリーブの栽培をしている人は誰もいなくて珍しかったからネ」と笑顔でユーモアたっぷりに話す高山さんのチャーミングな人柄と活動への熱い想いに惹かれたのは、会員さんだけではありません。
千葉大学園芸学部非常勤講師である株式会社フォルクの代表取締役 三島由樹さんがオリーブコミューンの取組みに賛同し、大学院生の演習地としても活用されることになったのです。
オリーブコミューンを起点とした中野地区や市東地域の活性化を図る取組みの実践の場として、三島先生の指導の下、千葉大学園芸学部の大学院生の皆さんがこの地を訪れるようになりました。
オリーブコミューンの取組みが、全国に数ある都市近郊の過疎地域のプロトタイプとなる事を目指し、2020年2月2日には学生が中心となり企画した「第1回オリーブコミューンフェス」が開催されました。
竹害に悩む地域の人とフェスの参加者が協同制作した巨大竹ブランコで遊んだり、農山村に住む人の暮らしを脅かすイノシシについて考え、野生獣と人との関係について理解を深める解体ショーを実施したり、中野地区を舞台とした謎解きウォークラリーや市東地域のこれからについて考えるワークショップを開催するなど、遊びながら地域の抱える問題についても考えるフェスティバル。
更には、オリーブコミューンらしく保湿効果たっぷりのオリーブ足湯体験や、オリーブオイルの試飲・販売、オーガニックオイル講座の開催に加え、学生さんと地域の方がゼロから作った石窯で、地域の食材を使った絶品ピザやアヒージョを作りもされたそうです。
当日の企画内容を伺っただけで、わくわくしてしまいます。
学生さんたちのフレッシュで奇抜な発想を受けとめ、その行動力を傍で支えることは、未来への投資であり会員の皆さんのやりがいにも繋がっているとのこと。
また、9月28日には市東第一小学校の2年生9名が、体験学習としてオリーブコミューンに訪れる予定になっています。
幼少期には物やお金を持つことが幸せと考えてしまいがちですが、「心からのハピネス」とは何なのか、「平和」とは何なのかを少しでも考えるきっかけになればと、子ども達に体験してもらう内容を一生懸命に考えたそうです。デジタル化が進む世の中であっても、デジタルとネイチャーの調和がとれた子どもに育って欲しいと願う高山さんの想いは、初めて見るオリーブの実や、木陰に揺れるハンモック、里山に咲く可憐な花々に触れることで、きっと子ども達にも届くと思います。
この地域に住んでいることに喜びを感じ、故郷への愛着に繋がるきっかけになればと願って止みません。
お話を伺うなかで、高山さんが口にされた「グリーンリカバリー」と「SDGs(エスディージーズ)」の二つの単語。ニュースなどで一度は耳にされた事がある方も多いのではないでしょうか。
今年、世界はコロナウイルスの出現により人の動きが制限され、経済も大きな打撃を受けました。現代を生きる私たちが経験したことのない混乱のなか、実は悪いことばかりではなく嬉しい変化も世界では起きていました。
経済活動が抑制されたことで、大気汚染や水質汚染などの環境問題が急激に改善された事例が各国から報告されたのです。
このことから、環境問題への意識が高いヨーロッパの国々を中心に、経済の回復を図ることと併せ、自然の回復力を高めながら暮らしや社会を立て直していく「グリーンリカバリー」の考えが広く提唱されるようになりました。
国連が提唱するSDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
これは、2016年~2030年という15年の間に国際社会が達成すべき目標を掲げたもので、大きく分類して17の目標から構成されています。また、それぞれの目標がさらに小さな目標に細分化されていて、現代社会が抱える問題を広くカバーしています。
17の目標のなかには、「住み続けられるまちづくり」や、「陸の豊かさを守る」「平和と公正を全ての人に」など、「オリーブコミューン」が掲げる理念に通じる目標もあります。
人と自然が共存し豊かに暮らしていくために必要なことは、世界共通。
「オリーブコミューン」が市東地域の中核の一つとなり、様々な人の集合地として何かを達成するストーリーを作りたい、と将来の展望を語る高山さんの言葉に笑顔で頷く会員の皆さん。
ご近所の方や、高山さんの学生時代からの友人、同じ趣味を持つ友人、ハーブを植えるイベントに参加したことをきっかけに自然に触れる楽しさにすっかり魅了され、今ではオリーブコミューンでの活動が生きがいとなった方など、オリーブコミューンの活動に参加したきっかけは様々ですが、共通しているのは、高山さんの想いに共感し、皆さん自身がここでの活動を楽しんでいらっしゃること。
家庭菜園を始める人、ハーブを植える人、木陰にハンモックを設置する人、蜜蜂の巣箱を設置する人。
やってみたいと思った事を、みんなが全力で応援し実現していくのがオリーブコミューン流。
オリーブコミューンの活動を行う上で、高山さん達が大切にしている事は環境への配慮です。
オリーブ栽培も、オーガニック栽培にこだわっていますが、地中海原産のオリーブを日本の気候で育てるのはとても大変なのだそうです。特に頭を悩ませているのが害虫であるゾウムシ。幹に穴を開けて入り込み、木の中で育つ幼虫が木を枯らしてしまうそうです。極力農薬を使いたくないため、見つけ次第捕殺したり、穴に直接薬を流し込むことで対応しているそうですが、処理が追いつかずに被害が拡大し、当初100本植えた木が80本ほどに減ってしまっている状況です。
追い打ちをかけるように、昨年千葉県を襲った台風により、オリーブの木の多くが風で倒れてしまったそうです。10年近く手塩にかけて育ててきたオリーブ畑のあまりの惨状に、一度は心が折れて活動を止めることも考えたそうですが、停電が11日間続くなか、地元の方々が重機3台とチェーンソーで1週間近くかかって周辺の整備を行うなど、地域が一丸となって活動する姿と、会の活動を支えてくれる人たちの励ましに力をもらい、頑張る気力を取り戻したそうです。
会を支える仲間の一人、オリーブの輸入販売を手掛けている株式会社Oleaの安川代表取締役は、高山さんと共に日本でのオリーブ栽培の先進地である瀬戸内や、オリーブ栽培の本場であるチュニジアにも高山さんと視察にいったオリーブコミューンの強い味方。
今はオリーブ油の採油量は販売できる程の量は確保できていない状況ですが、オリーブ油の販売に限らず、オリーブの実やハーブなどを加工・販売する6次産業を目指しつつ、農作業に従事することで心も身体も健康になることも目指しています。
高山さんが想いを込めて植え始めたオリーブの樹に、多くの人が集い、多くの夢が次々と実現しています。
オリーブを中心に大勢の人が笑顔で賑やかに集うオリーブコミューンは、愛に溢れたとても居心地の良い場所でした。
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