【取材日記】テレビ電話支援会
更新日:2023年09月08日
「認知症やうつ病の方など、会話の機会が少ないお年寄りに対し、傾聴の会のボランティアのみなさんと、テレビ電話を介して、会話の機会を持ってもらうことで、ちょっと元気になってもらおうかということを目指している会です。お年寄りがテレビ電話の機会を持ってもらうために、一つは、機械やインターネットの設定の支援、もう一つはボランティアさんに協力を依頼して、会話の機会を持ってもらう2つの活動を行っています」。
安田代表は、言語聴覚士として認知症の方や介護者の支援を続けてきました。『テレビ電話支援会』を立ち上げたきっかけについて、
「2003年に私自身が通信関係の研究機関から、テレビ電話支援の研究に誘われたことがきっかけです。その当時から、将来、テレビ電話や遠隔支援が、交流の大事な機会になることが予想されていました。当時は、まだインターネットが使えば使うほど料金がかかる従量制で、ようやく光通信がはやり始めた頃、まだテレビ電話自体が一般化するとは普通の方は思わなかったですね。でも我々は信じていましたから。」と当時を振り返ります。
「当時から、『画面共有』ということを我々は考えていました。遠隔で顔を見て話すだけではなくて、写真や資料をお互いの画面に写して、それを見ながら話せばもっといいだろうと。それが今、通信機器の普及により、誰でも『画面共有』できるようになりました」。
研究が進み、テレビ電話やビデオ通話などのツールも普及してきた2015年に、大学、研究者、会話ボランティア、パソコンボランティアなどによる『テレビ電話支援会』を立ち上げました。
現在の活動について、安田代表は、
「会話のボランティアさんと施設に入所している方との会話は、政府の支援などもあって、徐々に進んできています。我々の会の青木さんは、『傾聴の会ひだまり』の代表でもあり、市内の5,6か所の高齢者施設とテレビ電話を介して会話の機会を持っています。最近は、国内の傾聴の会からも引き合いがきていて、青木さんが一生懸命ガイダンスしているところです。今日もこの取材に参加してもらおうと思ったのですが、福島の傾聴の会へのガイダンスをしています」。
「今、画面に出ている方は、京都工芸繊維大学の鈴木紀子さんです。私が京都工芸繊維大学の桑原教彰先生と一緒にテレビ電話の研究をしていて、そのご縁が今でも続いていて、鈴木さんには事務局を引き受けてもらっていて、ご苦労させています」と頭を下げる安田代表。
鈴木さんは、
「会話のボランティアと利用者のマッチングの調整をさせてもらっています。利用者は認知症の高齢者が多いですが、会話をすることで笑顔が増えたり、昔のことを思い出したり、会話の効用がいろいろあるそうです。会話のボランティアは慣れた方が多いので、利用者がもっと増えてくれるといいですね。そして、会話のボランティアをしてくださる方やパソコンの相談を受けてくださる方、慰問してくださる方、みなさんがどんどん興味を示して、仲間になってほしい」と話してくれました。そして、安田代表は、
「浜詰靖博さんを紹介します。パソコンボランティアとして活動されていまして、スカイプの設定がうまくいかないとか、ネット関係のいろいろなアクシデントにアドバイスとかリモートで対応してくださっている方です」と紹介。
浜詰さんは、
「パソコンの画面が映らない、声が聞こえない、スカイプ自体が立ち上がらないなどの問題が多々起こります。カメラで画像を共有できるので、相手の操作を確認しながら、『そこをクリックしてください』とか言いながら、アドバイスしています。カメラ越しですが、直ったときはこっちもうれしくて」と笑顔で話してくれました。
テレビ電話は簡単で、楽しく、有効であることを伝えるパンフレットを作成
今後の活動について、
「全国には傾聴の会の方もたくさんいらっしゃいます。そういう資源やテレビ電話というツールを活かして、ぜひ会話の機会を増やしてほしいです。それから、夢のような話ですけど、認知症の方など、『やっぱり夜中に人と話したい』、『時間に関係なく24時間しゃべりたい』という方もいますので、夜でもテレビ電話をやりたいと思っています。やれる方法が1つだけあって、時差を利用して、海外の日本人が夜中に会話の相手をしますとかね。このようなアイデアを言っておくと、『じゃあ私がやりましょう』、『うちの会でやりましょう』という方も、いらっしゃると思うので期待しています」。
そして、
「この会は認知症の方に会話の機会を持ってもらおうということで始めました。もちろんそれは今も変わらないですけれど、何か今の風潮を見ていると、『どうやったら認知症にならないか』、『何を食べたら認知症にならないか』ということに目を向けられますけど、やはりまだ医学的にはかなり難しい話です。そういうところに気を使うよりも、事前にネットワークを組んでおいて、『いつでも会話ができる』、『いつでも他の支援者とつながっている』、そういうことに、みなさんが目を向けてくれるといいかな」と話してくれました。