【取材日記】白金小学校花植会
更新日:2023年09月08日
お知らせ
白金小学校の校門を入ると目を引くのは、美しく手入れされた花壇です。
今回は白金小学校花壇整備の活動をされている「白金小学校花植会」会長の佐藤東市さんと副会長の谷口克介さんにお話を伺いました。
白金小学校での取材は4月16日でしたが、校門を入って目に飛び込んできたのは、校舎を囲うように咲き誇る色とりどりの花々。まるで植物園に来たかのようです。
花植会のメンバーは7人ですが、元々は、君塚5丁目町会の有志7~8人で小学校の近くにある2カ所の公園の清掃活動を行う公園愛護団体として7年前より活動していました。
週1回、砂場の整地やゴミ拾い、U字溝の掃除などをしていましたが、1年程してメンバーから公園内に花壇を造りたいとの提案があり、近くのホームセンターで花苗を購入することになったそうです。メンバーの寄付で集まった予算は2千円。1鉢100円の花を購入すると、全部で20鉢しか購入出来ません。手入れをしている公園は2カ所ですから、それぞれの公園の花壇に10鉢の花が植えられましたが、広い公園に彩を添えるにはあまりにも寂しい状況です。しかも、潤沢な予算がないなか、季節毎に花を購入するのは会員にとっても経済的な負担となります。途方に暮れていたところに通りかかったのが、現在の花植会会長の佐藤さんでした。
佐藤さんは花の栽培を趣味にされており、自宅には種から育てた花苗が沢山あったことから、公園の花壇用に花苗を分けてくださる事になりました。
店頭にも置いていないような蕾も付いていない花苗。種から花を育てたことのない他のメンバーからすると、どんな花が咲くのか想像もできず、まるで草のようにも見える数品種の花苗約100ポットを佐藤さんに指示されるまま、植えたそうです。
そして半年後、綺麗に咲いた花々を見て、メンバーだけでなく、公園を利用する人や近所の方々もとても喜ばれたそうです。
これを機に、花から採取した種から苗を育てる方法や挿し木の方法を佐藤さんがメンバーに指導し、皆で手分けして種まき、苗つくり、花植えをするようになりました。
驚くのは、佐藤さんの仕事の丁寧さ。
種を購入すると、袋に書かれている説明文をもとに会員さん向けに育て方をまとめたメモを作成し、花壇に植えられる大きさになるまで各会員が自宅で苗を育てます。そして、花が咲き種が出来ると、その種からまた苗を育てる繰り返し。
種まきから花壇に植えられる苗になるまで、早いもので2ヶ月から半年。なかには1年から2年かかるものもあるそうですが、喜んでくれる人のことを想像しながら日々、水をやり苗を育てたそうです。
培養土やポット代はかかりますが、種を購入するのは一度だけであとは全て自前で育てられるようにした事で、植えられる花の数が飛躍的に増えていきました。
公園には季節毎に見事な花が咲くようになったことで、近所の方や仲間とのコミュニケーションが増えるきっかけにもなったそうです。
佐藤さんが愛護団体に加入して4年がたつ頃には、皆さんの手際も良くなり、花苗も5千株を超えるようになりましたが、それほどの数の花苗を全て公園内には植えきれません。
どこか他に植える場所はないかと思案していた際、民生委員をされていた現副会長の谷口さんが白金小学校の入学式に来賓として招かれました。
当時の白金小学校は、敷地内に花壇はあるものの草が生い茂り、花といえば式典用に準備されたプランターに植えられた花だけ。荒れた花壇を目にした谷口さんは、早速教頭先生に相談し、花苗を植えさせてもらう事になったのが、2019年の6月でした。
これを機に、「白金小学校花植会」を結成し、週2~3回、午前7時50分から11時まで学校の花壇で活動をするようになりました。
手始めに取り掛かったのは、正門前にある花壇、通称「桜の木円形花壇」。中央には桜の木が植えられていましたが、桜の足元には雑草が生い茂っていました。
草を抜き、土を耕し、肥料を入れ、少しずつ花を植える範囲を増やし、翌年の春には満開の桜とともに、美しく手入れされた花壇で新入生と進級した子ども達を出迎えることが出来ました。
花壇づくりで花植会の皆さんが拘っているのは、季節ごとに咲く花を変える事。
宿根草にすれば植え替える手間は省けますが、花の咲かない季節の方が長くなります。
子ども達には、1年を通じ季節を感じられるように、そして少しでも明るい気持ちで学校に通って欲しいとの想いから、常に花の植え替えをしているそうです。
手先の器用なメンバーの皆さんは、既存のタイヤ花壇に少しでもたくさんの花が植えられるように手を加えました。
校門から昇降口までの通路にあるタイヤ花壇が子ども達の登下校を見守ります。
保健室前の花壇も大きく様変わりしました。
多肉植物のコーナーはいつでも楽しむことの出来る宝石箱のような空間になりました。
プールに向かう道中にある水飲み場花壇も、生えていた木を伐採して花の花壇に生まれ変わりました。
鳥小屋前に植えたヒマワリは3メートル以上に育ち、子ども達が大歓声を上げたそうです。
令和2年度に白金小学校に植えられた花苗は、5,300株にもなり、手入れをする花壇も10ヶ所以上になりました。
プール脇で雑草に埋もれていた菜園は子ども達や先生と一緒に、復活させました。
理科の授業で観察する野菜を植え、収穫体験をし、収穫した野菜は家庭に持ち帰ってもらい料理をして食べてもらう。お店でしか見ることのなかった野菜やイチゴが、小さな苗から育ち、実となる様子を観察することで植物に興味をもった子ども達も多く、休み時間になると作業を手伝いに来てくれる子ども達も出てきたとのこと。
次はどんな花や野菜を植えようか、子ども達が喜ぶものは何だろうと考えるのが楽しいと語る佐藤さんと谷口さんの笑顔がとても印象的でした。
左から、谷口さん、佐藤さん、鈴木校長先生
取材の最後に、校長先生にお話しをお伺いしました。
約2年前に白金小学校花植会の活動が始まってから、子ども達はもちろんのこと、先生方や近隣の方からも花壇の美しさが話題に上ることが多くなり、散歩がてら学校の花壇を楽しみに来る方も増えたり、近隣の道路に花を植える人が出てくるなど、花壇が地域と学校を繋げ、人と人を繫げるきっかけになっているとのこと。
「市内で一番花壇が綺麗な学校と言われているんですよ。誰よりも多く花壇の作業に入る佐藤さんのことは、子ども達も、保護者も、先生方も知っています。」
取材中、校長先生をはじめ花植会のメンバーの方を見かけると笑顔になる子ども達や先生方の姿を目にし、いかに皆さんの活動が愛されているのかを実感することが出来ました。
「毎日、綺麗な花に迎えられて登校する子ども達は、気持ちも穏やかになる。花が子ども達の気持ちを育ててくれています。花植会の皆さんの活動には、本当に感謝しています」
白金小学校花植会の皆さんの活動は、いまや白金小学校にとっても地域の方にとっても、かけがえのないものになっていることが伝わってきました。
手入れの欠かせない植物相手ですから、手間暇もかかります。これからも活動を継続していくために、活動に協力してくださる方を募集しているそうです。
地域の宝である子ども達の心を、花を通じて育てる活動に皆さんも参加してみませんか。
花壇の整備は月2回。第1・第3土曜日。
花壇の手入れは週1回。毎週火曜日の午後。
そのほか、水やりや自宅での苗の育成など、各自が出来る範囲での活動を行っています。
取材の様子を収録した市原FMの「イチラジ」はこちらから